趺陽脉

趺陽脉とは現代的に考えると、趺陽脉とは何なのか?

趺陽脉への言及がある場合は必ず糖尿病である

  • 正常な趺陽脉は伏である。

趺陽脉を含む条文古典に散見する趺陽脉

宋版傷寒論1-19条

趺陽脉浮而濇 少陰脉如經者 其病在脾 法當下利 何以知之
若脉浮大者氣實血虚也 今趺陽脉浮而濇 故知脾氣不足胃氣虚也 以少陰脉弦而浮 纔見此爲調脉 故稱如經也 若反滑而數者故知當屎膿也

趺陽の脉浮にして濇。少陰の脉經の如き者、其の病は脾に在り。法として當に下利すべし。何を以て之を知るか。
若し脉浮大の者は氣實血虚也。今趺陽の脉浮にして濇。故に脾氣不足にして胃氣虚なるを知る也。少陰脉の弦にして浮、纔かに見るるは此を調脉と為す。故に經の如しと稱する也。若し反って滑にして數なる者は當に屎膿を尿すべし也。

宋版傷寒論1-21条

趺陽脉遲而緩胃氣如經也 趺陽脉浮而數 浮則傷胃 數則動脾 此非本病 醫特下之所爲也
榮衞内陷 其數先微 脉反但浮 其人必大便鞕 氣噫而除 何以言之
本以數脉動脾 其數先微 故知脾氣不治 大便鞕 氣噫而除 今脉反浮 其數改微 邪氣獨留 心中則飢
邪熱不殺穀 潮熱發渇 數脉當遲緩 脉因前後度數如法 病者則飢 數脉不時 則生惡瘡也

趺陽脉、遲にして緩なるは胃氣經の如き也。趺陽脉浮にして數。浮は則ち胃を傷る。數は則ち脾を動ず。此れ本の病に非ず。醫特之を下して為す所也。
榮衞内陷し、其の數先は微。脉は反って但浮。其の人必ず大便は鞕く、氣は噫して除かる。何を以て之を言うか。
本數脉脾を動じ、其の數先に微となるを以て故に脾氣治せずして大便鞕く、氣噫して除かるるを知る。今脉反って浮。其の數は微に改まる。邪氣獨り留まり、心中則ち飢ゆ。
邪熱、穀を殺さず、潮熱して渇を發す。數脉は當に遲緩なるべし。脉、前後度數に因って法の如し。病者則ち飢ゆ。數脉時ならざれば則ち惡瘡を生ずる也。

宋版傷寒論1-26条

趺陽脉浮 浮則爲虚 浮虚相搏 故令氣籌 言胃氣虚竭也
脉滑則爲噦 此爲醫咎 責虚取實 守空迫血 脉浮 鼻中燥者 必衄也

趺陽脉の浮。浮は則ち虚と爲。浮虚相搏つ。故に氣をして籌ばしむ。胃氣の虚竭を言う也。
脉滑なるときは則ち噦を爲す。此れ醫の咎と爲す。虚を責め、實を取り、空を守り血に迫る。脉浮にして鼻の中の燥く者は必ず衄す。

宋版傷寒論2-24条

趺陽脉滑而緊 滑者胃氣實 緊者脾氣強 持實撃強 痛還自傷 以手把刃 坐作瘡也

趺陽の脉滑にして緊。滑なれば胃氣實す。緊なれば脾氣強し。實を持って強を撃。痛還って自らを傷る。手を以って刃を把り、坐して瘡を作る也。

宋版傷寒論2-26条

趺陽脉伏而濇 伏則吐逆 水穀不化 濇則食不得入 名曰關格

趺陽の脉伏にして濇。伏なれば則ち吐逆、水穀化せず。濇なれば則ち食入ることを得ず。名づけて關格と日う。

宋版傷寒論2-29条

趺陽脉大而緊者 當則下利 爲難治

趺陽脉大にして緊なる者、當に則ち下利すべし。難治と為す。

宋版傷寒論2-31条

趺陽脉緊而浮 浮爲氣 緊爲寒 浮爲腹滿 緊爲絞痛 浮緊相搏 腸鳴而轉 轉即氣動 膈氣乃下 少陰脉不出 其陰腫大而虚也

趺陽の脉緊にして浮。浮は氣と為す。緊は寒と為す。浮は腹滿と為す。緊は絞痛と為す。浮緊相搏てば腸鳴して轉ず。轉ずるときは即ち氣動き。膈氣乃ち下る。少陰の脉出でず。其の陰が腫大して虚する也。

宋版傷寒論2-33条

趺陽脉沈而數 沈爲實 數消穀 緊者病難治

趺陽の脉沈にして數。沈は實と為し、數は消穀とす。緊の者は病治し難し。

宋版傷寒論2-35条

趺陽脉浮而芤 浮者衞氣虚 芤者榮氣傷 其身體痩 肌肉甲錯 浮芤相搏 宗氣微衰 四屬斷絶

趺陽脉浮にして芤。浮の者は衞氣虚す。芤の者は榮氣傷る。其の身體は痩せ、肌肉は甲錯す。浮芤相搏てば宗気は微衰し、四屬は斷絶す。

宋版傷寒論2-37条

趺陽脉微而緊 緊則爲寒 微則爲虚 微緊相搏 則爲短氣

趺陽の脉微にして緊。緊は則ち寒と為す。微は則ち虚と為す。微緊相搏てば則ち短氣と為る。

宋版傷寒論2-39条

趺陽脉不出 脾不上下 身冷膚鞕

趺陽の脉出でず。脾は上下せず、身は冷えて膚は鞕し。

宋版傷寒論247条

趺陽脉浮而濇 浮則胃氣強 濇則小便數 浮滿相搏 大便則鞕 其脾爲約 麻子仁丸主之 方三十一

趺陽の脉浮にして濇。浮なれば則ち胃氣強し。濇なれば則ち小便數。浮滿相搏てば大便は則ち鞕し。其の脾は約と為す。麻子仁丸これを主る。(方三十一)

麻子仁丸方
麻子仁二升 芍藥半斤 枳實半斤 炙 大黄一斤 去皮 厚朴一尺 炙 去皮 杏仁一升 去皮尖 熬 別作脂 
右六味 蜜和丸如梧桐子大 飮服十丸 日三服 漸加 以知爲度

金匱要略5-9条

趺陽脉浮而滑 滑則穀氣實 浮則汗自出

趺陽の脉浮にして滑。滑なるときは則ち穀氣實す。浮なるときは則ち汗自ら出づ。

金匱要略10-1条

趺陽脉微弦 法當腹滿 不滿者必便難 兩胠疼痛 此虚寒從下上也 以温藥服之

趺陽の脉微弦。法として當に腹滿すべし。滿たざる者、必ず便難く、兩胠疼痛す。此れ虚寒下従り上る也。温藥を以って之を服す。

金匱要略11-15条

趺陽脉浮而濇 浮則胃氣強 濇則小便數 浮濇相搏 大便則堅 其脾爲約 麻子仁丸主之

趺陽脉浮にして濇。浮なれば則ち胃氣強し、濇なれば則ち小便數。浮濇相搏てば大便則ち堅し。其の脾約と為す。麻子仁丸これを主る。

麻子仁丸方
麻子仁二升 芍藥半斤 枳實一斤 大黄一斤 厚朴一尺 杏仁一升
右六味 末之 煉蜜和丸梧子大 飮服十丸 日三 以知爲度

金匱要略13-2条

寸口脉浮而遲 浮即爲虚 遲即爲勞 虚則衞氣不足 勞則榮氣竭 趺陽脉浮而數 浮即爲氣 數即消穀而大堅 氣盛則溲數 溲數即堅 堅數相搏 即爲消渇

寸口の脉浮にして遲。浮は即ち虚と為す。遲は即ち勞と為す。虚なれば則ち衞氣不足。勞なれば則ち榮氣竭く。
趺陽の脉浮にして數。浮は即ち気と爲す。數は即ち消穀と為す。而して大堅。氣盛んなるときは則ち溲數。溲數は即ち堅。堅と數相搏つときは即ち消渇と為す。

金匱要略13-8条

趺陽脉數 胃中有熱 即消穀引食 大便必堅 小便即數

趺陽の脉數。胃中に熱有り。即ち消穀して食を引く。大便は必ず堅く、小便は即ち數。

金匱要略14-6条

趺陽脉當伏 今反緊 本自有寒 疝瘕腹中痛 醫反下之 下之即胸滿短氣

趺陽の脉は當に伏なるべし。今反って緊。本と自ら寒有り。疝瘕、腹中痛む。醫反ってこれを下す。これを下せば胸滿短氣す。

金匱要略14-7条

趺陽脉當伏 今反數 本自有熱 消穀 小便數 今反不利 此欲作水

趺陽の脉は當に伏なるべし。今反って數。本と自ら熱有り。消穀す。小便數。今反って利せず。此れ欲作水を作さんと欲す。

金匱要略14-8条

寸口脉浮而遲 浮脉則熱 遲脉則潜 熱潜相搏 名曰沈
趺陽脉浮而數 浮脉即熱 數脉即止 熱止相搏 名曰伏
沈伏相搏 名曰水 沈則絡脉虚 伏則小便難 虚難相搏 水走皮膚即爲水矣

寸口の脉浮にして遲。浮の脉は則ち熱。遲の脉は潜。熱と潜と相搏つ。名づけて沈と曰う。趺陽の脉浮にして數。浮の脉は即ち熱。數の脉は即ち止。熱と止と相搏つ。名づけて伏と曰う。沈と伏と相搏つ。名づけて水と曰う。沈なるときは則ち絡脉は虚。伏なるときは則ち小便難し。虚と難と相搏ち。水皮膚を走る。即ち水と為る。

金匱要略14-20条

師曰 寸口脉沈而遲 沈則爲水 遲則爲寒 寒水相搏 趺陽脉伏 
水穀不化 脾氣衰則鶩溏 胃氣衰則身腫
少陽脉卑 少陰脉細 男子則小便不利 婦人則經水不通 
經爲血 血不利則爲水 名曰血分

師曰く、寸口の脉沈にして遲。沈は則ち水と為し、遲は則ち寒と為す。寒と水と相搏ち、趺陽の脉は伏。
水穀化せず、脾氣衰えるときは則ち鶩溏す。胃氣衰えるときは則ち身腫る。
少陽の脉卑、少陰の脉細。男子なるときは則ち小便不利。婦人なるときは則ち經水不通。
經は血爲り、血利せざるときは則ち水と爲る。名づけて血分と曰う。

金匱要略14-30条

師曰 寸口脉遲而濇 遲則爲寒 濇爲血不足 趺陽脉微而遲 微則爲氣 遲則爲寒 寒氣不足 則手足逆冷 手足逆冷 則榮衞不利 榮衞不利 則腹滿脇鳴相逐 氣轉膀胱 榮衞倶勞
陽氣不通即身冷 陰氣不通即骨疼 陽前通則惡寒 陰前通則痺不仁 陰陽相得 其氣乃行 大氣一轉 其氣乃散 實則失氣 虚則遺尿 名曰氣分

師曰く、寸口の脉遲にして濇。遲は則ち寒と爲し、濇は血不足と為す。趺陽の脉微にして遲。微は則ち気と爲し、遲は則ち寒と為す。寒にして氣不足なるときは則ち手足逆冷す。手足逆冷なるときは則ち榮衞利せず。榮衞利せざるときは則ち腹滿、脇鳴相逐う。氣、膀胱を轉す。榮衞倶に勞る。
陽氣通ぜざる時は即ち身冷ゆ。陰氣通ぜざるときは即ち骨疼く。陽、前通すれば則ち惡寒す。陰、前通すれば則ち痺不仁す。陰陽相得るときは其の氣乃ち行く。大氣一轉すれば其の氣乃ち散る。實するときは則ち失氣し、虚するときは則ち遺尿す。名づけて気分と曰う。

金匱要略15-2条

趺陽脉緊而數 數則爲熱 熱則消穀 緊則爲寒 食即爲滿
尺脉浮爲傷腎 趺陽脉緊爲傷脾 風寒相搏 食穀即眩 穀氣不消 胃中苦濁 濁氣下流 小便不通 陰被其寒 熱流膀胱 身體盡黄 名曰穀疸
額上黒 微汗出 手足中熱 薄暮即發 膀胱急 小便自利 名曰女勞疸 腹如水状不治
心中懊憹而熱 不能食 時欲吐 名曰酒疸

趺陽脉、緊にして數。數は則ち熱と為し、熱すれば則ち消穀す。緊は則ち寒と為し、食すれば即ち滿と為る。尺脉浮は腎を傷ると為す。趺陽脉緊は脾を傷ると為す。風寒相搏ち、穀を食すれば即ち眩む。穀氣消せず。胃中苦濁す。濁氣下流し、小便通ぜず。陰、其の寒を被り、熱は膀胱に流れる。身體盡く黄ばむ。名づけて穀疸という。額の上黒く、微かに汗出で、手足の中熱し、薄暮に即ち發す。膀胱急にして小便自利す。名づけて女勞疸と日う。腹は如水の状の如きは治せず。心中懊憹して熱し、食する能わず。時に吐かんと欲す。名づけて酒疸と日う。

金匱要略17-5条

趺陽脉浮而濇 浮則爲虚 濇則傷脾 脾傷則不磨 朝食暮吐 暮食朝吐 宿穀不化 名曰胃反 脉緊而濇 其病難治

趺陽脉、浮にして濇。浮は則ち虚と為す。濇は則ち脾を傷る。脾傷るるときは磨せず。朝に食すれば暮に吐く。暮に食すれば朝に吐く。宿穀化せず。名づけて胃反と曰う。脉緊にして濇なるは其の病治し難し。