傷寒論 辨太陽病脉證并治中第6-63条

原文

發汗後 不可更行桂枝湯 
汗出而喘 無大熱者 可與麻黄杏仁甘草石膏湯 方二十六

發汗後、更に桂枝湯を行る可からず。
汗出でて喘し、大熱無き者は麻黄杏仁甘草石膏湯を與う可し。(方二十六)

麻黄杏仁甘草石膏湯方

麻黄四兩 去節 杏仁五十箇 去皮尖 甘草二兩 炙 石膏半斤 碎 綿裹
右四味 以水七升 煮麻黄 減二升 去上沫 内諸藥 煮取二升 去滓 温服一升 本云 黄耳柸

エキス剤有

麻杏甘石湯

麻杏甘石湯の飲み方

  • 麻杏甘石湯掲載条文傷寒論63条162条、金匱要略14-26条
  • 傷寒論63条:麻黄(節を除き、先煎後に上沫を除く)、2升まで煮詰める
  • 傷寒論162条:麻黄(先煎後に白沫を除く)、3升まで煮詰める

条文解説条文を細かく解釈してみよう

發汗後発汗した(傷寒論162条では下痢後)。深刻ではないが脱水気味である。

不可更行桂枝湯発汗しやすい状態にする桂枝湯を服用させると脱水が悪化してしまうので、桂枝湯は不可。

汗出 喘発汗(この時点で脱水はない)。酸塩基平衡異常(アシドーシス)による

無大熱者 可與麻黄杏仁甘草石膏湯高熱がない(高ナトリウム血症がない)場合は麻杏甘石湯を試してみる(與)。

考察この条文はどのような症状を指しているのだろうか?

アシドーシス、高カリウム血症

  • アシドーシスがあれば、カリウムの細胞外シフトが促され高カリウム血症になる。また高カリウム血症もアシドーシスの原因となる。
  • 麻黄:エフェドリンがカリウムの細胞内シフトを促す(高カリウム血症対策)。煎液を中性に傾ける石膏が配合されているため、量は多め。
  • 甘草:高カリウム血症対策。同時に腎臓での水・ナトリウム・水回収を促進する(高ナトリウム血症は否定されているので配合可能)。
  • 杏仁:抗菌。
  • 石膏:杏仁により麻黄(エフェドリン)の抽出が落ちるため、石膏で煎液のpHを調節。綿で包むのでカルシウムはあまり溶けださない。綿で包むのは大熱がないからか。

中国伝統医学ではこう考えた
日本漢方ではこう考えた