同じではないことに注意!
同じ方剤でも、メーカーによって内容が違うことが少なくありません。紛らわしいと思うかもしれませんが、場合によっては患者さんの症状によって使い分けることができます。うまく使い分けましょう。
具体的にどんな違いがあるのかについては、以下になります。
- 原料が違う
- 製法が違う
- 生薬配合量・生薬配合バランスが違う
- 剤型が違う(細粒・錠剤・カプセルなど)
- 単一生薬の散剤がある場合がある
原料が違う
使用する基原植物が違う
オクトリカブトは日本原産のトリカブト属植物で
中国薬典では附子の基原植物に指定されていません
各メーカーは、日本薬局方で規定された生薬を使用しています(参考「厚生労働省 日本薬局方」)。しかし、日本薬局方で、基原植物が複数規定されている場合があります。
例えば、附子の基原植物は「ハナトリカブト(Aconitum carmichaeli Debeaux)、またはオクトリカブト(Aconitum japonicum Thunberg)の塊根」と2種類の基原植物が規定されています(→「附子の基原」)。ハナトリカブトのみを使用しているメーカー、オクトリカブトのみを使用しているメーカー、両方を使用しているメーカーがあります。当然、含まれる薬効成分に微妙な違いがあります。
具体的な成分の違い、使い分けについては各生薬で解説します。
使用する生薬が違う
各メーカーによって、配合されている生薬が違う場合があります。
例えば、同じ五苓散でも、他メーカーと比較すると、T社は蒼朮を採用し、T2社は桂枝を採用しているのがわかります。
配合生薬の比較(例:五苓散桂枝湯)
製法が違う
例えば、附子含有処方でも、それぞれ修治方法が違うブシ1を採用しているメーカー、ブシ2を採用しているメーカーがあります(→「附子の現代的な使い方」)。
また、漢方エキス剤は製造工程で加熱処理されるため、古典では加熱加工されない方剤(散剤や丸剤)も基本的に加熱されていることになるのですが、例えばU社の八味地黄丸の様に、古典通り、加熱処理をせずに丸剤を製造するメーカーもあります。
これらの具体的な使い分けについては各方剤で解説します。
生薬配合量・生薬配合バランスが違う
先程の五苓散の例でも分かるように、メーカーによって生薬の配合量、配合バランスが全く違います。
これらの具体的な使い分けについては各方剤で解説します。
配合生薬の比較(例:五苓散桂枝湯)
剤型が違う(細粒・錠剤・カプセルなど)
各メーカーによって剤型が違います。先程の五苓散の例では、K2社のみ、錠剤が用意されており、患者さんの飲みやすさなどを考慮することができます。これについても各方剤で解説します。
また、メーカーによって付加剤に違いがあります。例えばエキス剤を服用して下痢をした…という患者さんがいる場合、生薬自体にそういった作用が考えられない場合、付加剤に原因がある時があります。そんな時は、原因となる付加剤を使用しないメーカーに変更するのもひとつの方法です。
単一生薬の散剤がある場合がある
メーカーによって、単一生薬の散剤を用意している場合があります。単一生薬の散剤は加法に大変便利です。これについても各方剤で解説します。
時々、薬局から「T社の葛根湯の在庫がないので、K社の葛根湯に変更しても良いですか?」といった疑義照会が入る場合があります。処方の意図によって回答が異なるわけです。