古典に忠実なわけではない
漢方エキス剤の長所
- 煎じる手間がなくなり、すぐに服用できる
- 煎じる際の独特な匂いを気にしなくても良い(場合によっては欠点になり得る)
- 持ち運びができる
- 配合生薬量が少ないので、効きすぎる(副作用の)心配が少ない
- 配合生薬量が少ないので、合方・併用・加法がしやすい
- 医師は保険病名で西洋薬的に処方できる(場合によっては欠点になり得る)
日本薬局方に収載されている以上、漢方処方(漢方エキス剤)も一般の薬品と同等に扱うのが本筋です。これにより医師は西洋薬的な感覚で漢方を処方することができるようになりました(参考「厚生労働省 日本薬局方」)。
- 薬局は調剤が楽になる
煎じ薬を扱う薬局は本当に少なく、院外処方箋の場合は「どのように薬を入手するか」も大きな問題です。まだ調剤自体にも時間がかかります。しかし漢方エキス剤であれば取り扱う薬局はとても多く、調剤の手間もかかりません。
- 安定した品質
天然物である生薬の成分不均衡や、煎じ方の個人差による品質のばらつきが解決され、いつでも同じ成分含有量のものを服用することができます。
- 保険が使える、比較的安価である
漢方エキス剤の短所
- 患者さんの病態に合わせた加減ができない(加法は使える場合がある)
内容量が固定されているため、患者さんの病態にあわせて方剤を創ることができません。従って、できるだけ病態に適合するようにするために合方、加法が必要となります(当然減法は不可能です)。
- 保険収載品の漢方エキス剤の種類が少ない(→「保険収載の漢方エキス剤はどの様に決まったのか?」)
- 加熱しない処方(散剤・丸剤)に加熱処理をしてしまっている
- 保険病名との齟齬が生まれている
漢方エキス剤の適応症は西欧医学的病名や症候であるので、純粋に漢方的な立場で処方すると保険病名と合わないというトラブルも出現しています。
- ほとんどの生薬を輸入に頼っている(漢方全体の短所でもある)
つまり、その作物(生薬)が不作となると入荷されないということです。また、価格は高騰し、保険薬局は大損することになるでしょう。最近では、メーカーが自社農場を持ったり、農家と直接契約を結んだり、最低備蓄量を1年以上としたりして色々と工夫しているようですが、ほとんど輸入という時点で、決定権は輸出国にあります。