保険収載の漢方エキス剤はどの様に決まったのか?

必ずしも最も有効な、もしくは基本的な漢方エキス剤がチョイスされて保険収載されたわけではない

保険収載漢方エキス剤の選定

中国2000年の誇る数多の古典に収載されている方剤は大変多いです。しかし保険収載されている漢方エキス剤はたったの148種類です。古人が組み立て、長い間に淘汰され、有効性の高さが実証された優秀処方を集めた148処方ではあるのですが、あくまで『傷寒論』と言われる古典(漢代成立の医学書)に書かれた処方が中心です。その選抜がどの様になされたかは不明です。

この選抜に関わった、一部のごく限られた漢方家が扱った処方なのかもしれません。とは言え、当時は漢方家自体がは非常に少なかったわけなのですが。

日本漢方自体が『傷寒論』主体ですので、『傷寒論』収載方剤が多いのは当然でしょう。漢方エキス剤が保険収載された経緯(→「漢方エキス剤とは何か」)を鑑みて仕方がないこともあります。


今後の漢方エキス剤

漢方エキス剤が保険収載された時代からも、環境の変化、科学の進歩等があり、必要とされる漢方エキス剤も変化してきて当然なのですが、今の日本の保険診療の実際では、現在の種類以上の漢方エキス剤が保険追加収載されることはまずあり得ません(→「漢方エキス剤とは何か」)。

出来るだけ保険収載薬を使用し、患者さんの負担を避けたいのは医療者としては当然ですが、はっきり言って、この保険収載された漢方エキス剤の数だけでは、治療手段としてはとても足りません。

煎じ薬、一般薬にも目を向けること、また合方・併用・加法等によって少しでも効果を高めることを考えることも現在では重要な漢方薬の使い方になります。具体的な運用方法については、各生薬、各方剤の項で解説します。